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千葉家庭裁判所松戸支部 昭和42年(わ)25号 判決

少年 T・K(昭二五・六・一六生)

主文

被告人を無期懲役に処する。

押収してある料理旅館○葉の名入りの白タオル一本(ただし、二つに切れている。)(昭和四二年押第一二号の二)およびナイフ一丁(刃渡り七・一センチメートル、二つ折、柄茶色)(同押号の一七)を没収する。

事実

(罪となるべき事実)

被告人は、当時仙台市に駐留していたアメリカ軍兵黒人D・E(当時二一歳くらい)を父とし、中学生であつたT・T(昭和八年一一月二一日生)を母として出生し、生後間もなく実父は朝鮮動乱に出勤したのち、その消息不明となり、ついで実母は他のアメリカ兵と結婚して渡米したので、四歳ころから仙台市で祖父母T・S、T・A、伯父T・R夫婦らの手によつて養育されてきたところ、小学校に入学したころから自己が黒人との混血児で特異な容貌のため周囲の者から特別視されるのを嫌悪し劣等感を抱くようになつて次第に反抗的粗暴的な性格となり、昭和三八年四月同市立○○○中学校に入学したころから怠学、家出、家財持出、窃盗等の非行を重ねるようになつたため同三九年九月宮城県立中央児童相談所を経て同県立教護院さわらび学園に収容され、同四一年三月中学校の義務教育課程を終えて同学園を退園し、前記伯父の世話で同市内の自動車整備工場で見習工として働くようになつたが、間もなく仕事を嫌い無断欠勤して同市内を徘徊徒遊しているうち、小遣銭に窮した結果空巣窃盗をしようと考え、

第一、同年六月一八日午後零時三〇分ころ、同市○条通××の××○山○三方において、○山○子所有の現金一八〇円、○淵○義所有の現金八、〇〇〇円を窃取し、

第二、同年八月初旬ころの午後零時ころ、同市○○×××町○○番地の×××○本○雄方において、家人不在中現金窃取の目的で屋内を物色したが、発見するにいたらなかつたためその目的を遂げず、

第三、同月九日午前一一時三〇分ころ、同市○○字○○○×の××○垣○吉方において、同人所有の現金二、〇四〇円を窃取し、

第四、同月一〇日午前一一時一〇分ころ、同市○○○○○町×の××○壁○一方において同人所有の現金三〇〇円を窃取し、

第五、同日午前一一時三〇分ころ、同市○○○○○町×の××○水○雄方柵内に窃盗の目的で侵入し、

第六、同月一五日午後零時三〇分ころ、同市○○○○○○○××の××○々○工○方において、同人所有の現金一万二、〇〇〇円を窃取し、

第七、同月二四日午後一時ころ、同市○○字○○宅地××の×○藤○方において、同人所有の現金三〇〇円を窃取し、

第八、同日午後一時一〇分ころ、同市○○字○○宅地××の×○藤○か○方において、同人所有の現金一、二〇〇円を窃取し、

第九、同年九月六日午後一時三〇分ころ、同市○町○○○の××○木○明方において、同人所有の現金約四、八〇〇円を窃取し、

第一〇、同日午後二時ころ、同市○○○××番××号○藤○平方において、同人所有の現金約一、〇〇〇円を窃取し、

第一一、前記第一ないし第一〇の各事件が仙台家庭裁判所に保護事件として係属し、観護の措置により仙台少年鑑別所に収容中、赤痢菌保菌の疑いにより同市樫ケ岡病院に入院させられたが、審判の結果少年院に送致されることをおそれ、同年一〇月四日同病院から逃走し、各地を放浪中、同月一一日午後零時四〇分ころ、新潟市○○町×××番地の××○十○又○方において、同人所有の現金約三万五、〇〇〇円、オリンピック一、〇〇〇円硬貨一個、同一〇〇円硬貨一〇個(一、〇〇〇円)を窃取し、

第一二、同月二一日午前一〇時過ぎころ、山口県徳山市○○○○×、×××の××番地○沢○夫方において、同人所有の現金約二万八、〇〇〇円、オリンピック一、〇〇〇円硬貨二個(二、〇〇〇円)、同一〇〇円硬貨八個(八〇〇円)および○津○子所有の指輪一個(時価約四、〇〇〇円相当)を窃取し、

第一三、同月二八日ころ、広島市○○町○×、×××の×番地○本○夫方において、同人所有の現金約二万二、四〇〇円、指輪(ホワイトゴールド一八金)一個(時価一万円相当)を窃取し、

第一四、同月下旬ころの午後零時一五分ころ、広島県佐伯郡○○町字○○××××番地の×○伯○之方において、同人所有の現金約五、〇〇〇円、わいせつ写真四四枚くらい(時価約四、〇〇〇円相当)、コンドーム約七個(時価約二〇〇円相当)を窃取し、

第一五、同年一一月四日静岡県清水市○○町××の×番地○木○子方において、同人所有の指輪四個(時価合計二六万二、〇〇〇円相当)、ネックレス一本(時価三万五、〇〇〇円相当)、オリンピック一〇〇円硬貨七個(七〇〇円)を窃取し、

第一六、同月八日午前一〇時過ぎころ、福島県須賀川市○町××の×番地○本○次方において、同人所有の現金約二万二、〇〇〇円を窃取し、

第一七、同月一六日千葉市○○町××××の×番地○沢○雄方において、同人所有の現金約八、三〇〇円、オリンピック一、〇〇〇円硬貨三個(三、〇〇〇円)、同一〇〇円硬貨三個(三〇〇円)を窃取し、

第一八、同月二一日午後零時ころ、埼玉県北埼玉郡○○○村大字○○××××の×番地○海○雄方において、同人所有の現金約三万円、オリンピック一〇〇円硬貨一個を窃取し、

第一九、同月二二日午前一一時ころ、茨城県古河市○○○××××番地○倉○夫方において、同人所有の現金約二万六、〇〇〇円を窃取し、

第二〇、同月二三日埼玉県○○○郡○○町大字○○○××××番地○内○好方において、同人所有の現金一万五、〇〇〇円を窃取し、

第二一、同年一二月一三日午前一〇時過ぎころから愛知県豊橋市○○町、○○町方面を空巣狙いの日的で徘徊していたが、適当な家がなく、所持金も僅かしかないところから強盗をも辞さない気持になり、麻繩一本(昭和四二年押第一二号の三)を用意し、引続きその附近を物色中、同日午後零時過ぎころ、同市○○町○○○××番地の×○藤○方において、同人の妻○藤○子(当時二五歳)が一人屋内にいるのを認めるや、同家に押し入つて金員を強奪しようと決意し、所携のナイフ(刃渡り七・一センチメートル、二つ折、柄茶色)(前記押号の一七)を右手に持ち、開放されていた同家東側六畳の間に土足のまま上り込んで同室で衣類の整理をしていた同女の胸部に右ナイフを突きつけ、「静かにしろ」、「金を出せ」などと申し向けて脅迫し、畏怖して反抗を抑圧された同女を右ナイフを突きつけたまま隣室の四畳半の間に連行し、同室にあつた洋服たんす内から前記○藤○所有の現金二万円を同女に取りださせてこれを強奪したうえ、同家にあつたタオルをもつて同女を後手に縛り、二つ裂きにしたタオルをその口の中に押し込み、さらに所携の白タオル(料理旅館○葉の名入りのもの)(前記押号の二)でその上に猿ぐつわをしたが、同女の身体に触れているうち劣情を催し、同女を強姦しようと決意し、開いていた硝子戸を閉めて同女をその場に仰向けに押し倒し、所携の前記ナイフで同女のはいていたタイツを腹部付近まで切り裂き、ズロースとともに引きはがして下半身を裸にし、上半身の着衣の前面を切り裂き、同女の上に乗りかかつてその反抗を抑圧し、強いて同女を姦淫したが、右各犯行が黒人との混血児である自己の特異な頭髪、容貌からすみやかに発覚することをおそれ、いつその事同女を殺害してしまおうと決意し、前記白タオル(料理旅館○葉の名入りのもの)を同女の首に後方から一まわり巻きつけて後部で結び、両端を強く引つ張つて絞めつけ、さらにその首に前記麻繩を巻きつけて絞めつけたうえ、蘇生を防止するため同家浴室の水の入つた風呂桶に同女を逆さまに投げ込み、その場で同女を窒息死させ、もつて殺害の目的を遂げ、

第二二、同月二四日午後二時ころ、水戸市○○町×××の×番地○田○雄方において、同人所有の現金約三万円を窃取し、

第二三、同月二七日午後二時三〇分ころ、千葉県東葛飾郡○○○町(現在○○○市)○○××××番地の××○辺○夫方において、家人が不在なことを確かめたうえ、土足のまま上り込んで金員窃取の目的で同家東側六畳の居間のたんす内を物色中、右○辺○夫の妻○辺○子(当時二八歳)が帰宅してきたところから同女より金員を強奪しようと決意し、同室の襖のかげに身を隠し、同女が近ずくや、これから飛出して矢庭に同女の左腕をつかみ、所携の前記ナイフをその胸のあたりに突きつけ、「騒ぐな」「静かにしろ」、「金を出せ」などと申し向けて脅迫し、同女が「金がない」といつて財布から五〇〇円くらいを出しただけで金を出ししぶるや、同女を隣室の六畳の洋間に連行し、同室で同女の両手を付近にあつた細紐で後手に縛りあげ、布類で目かくをし、口の中に布切れを押し込み、その上から所携の絆創膏を貼りつけ、さらにその上から布切れで猿ぐつわをし、同女がはいていたスカート、ズロースを脱がせ、その両足を細紐で縛りあげるなどしてその反抗を抑圧したうえ、「もつとあるだろう。」と申し向け、同女に金員のありかを指示させて前記六畳の居間の押入内から前記○辺○夫所有の現金二万四、〇〇〇円くらいを強奪し、その直後、右洋間において、全く反抗不能になつている同女の姿を見、劣情を催し、同女を強姦しようと決意し、その両足の細紐をほどいて同女の上に馬乗りになつてその反抗を抑圧し、強いて同女を姦淫したが、前記第二一の場合と同様の理由により、右各犯行の発覚をおそれ、同女を殺害してしまおうと決意し、同家にあつた帯じめ紐(ピンク色)(前記押号の五)を同女の頸部に巻きつけて強く緊縛したうえ、その場にあつた物差の先端を鋭く削り、これをもつてその胸部を突き刺すなどし、さらに蘇生を防止するため右帯じめ紐の先端に結び目を作り、これを同室にあつた整理たんすの抽斗にはさんで吊り上げ、その場で同女を窒息死させ、もつて殺害の目的を遂げ、

第二四、昭和四二年一月一六日午後零時過ぎころ、空巣狙いの目的で甲府市○○○○町×××番地の×○辺○勝方付近を徘徊中、たまたま同家に人の気配はあつたが、発見されたときは強盗に居直る覚悟で土足のまま同家南側六畳の客間の縁側から上り込んで同家台所側の四畳半の間において、金員を物色中、隣室で掃除をしていた前記○辺○勝の次女○辺○美(当時二五歳)に発見されるや、所携の前記ナイフを同女の胸部に突きつけ、「騒ぐな」と申し向けて脅迫し、同家にあつた電気アイロンコード二本(前記押号の六、七)で同女を後手にしてその手首を縛りあげ、その反抗を抑圧したうえ、「金を出せ」と申し向け、同女に金のありかを指示させて同女を隣室の六畳の居間に連行し、同室で所携の麻繩を五〇センチメートル一本(前記押号の八)、五二・五センチメートル一本(同押号の九)、三八センチメートル一本(同押号の一〇)、二五センチメートル一本(同押号の一一)にそれぞれ切つてこれらで同女の手足を縛りつけているうち、同家の飼犬が吠えたので、各室の硝子戸を閉めたうえ、同女に対し、同所にあつた布切れを切つてその口の中に入れ、布切れをもつて猿ぐつわや目隠しをするなどの暴行を加え、その後同女の足を縛つた麻繩をいつたんほどいて同女を前記六畳の客間に連行し、同室において、再びこれを縛りなおし、その反抗を抑圧し、さらに右各室の硝子戸を内側より施錠してから同家各室内のたんす等を物色して同女およびその母○辺○つ○所有の現金合計約一万円を強奪し、その直後、右六畳の客間において、前記暴行、脅迫により畏怖している右○辺○美の姿を見、劣情を催し、同女を強姦しようと決意し、同女の手足を縛つた麻繩などをほどき、そのはいていたズロース、スラックス等を脱がせ、さらに所携の前記ナイフで同女の着用していたセーター、下着類を切り裂きはぎとつて全裸にし、同女の上に乗りかかつてその反抗を抑圧し、その場で二回にわたり強いて同女を姦淫したが、前同様右各犯行の早期発覚をおそれ、同女を殺害してしまおうと決意し、前記電気アイロンコードをその頸部に一まわり巻きつけて緊縛したうえ、蘇生を防止するためさらに同室の床の間の鴨居に吊り下げ、同女をその場で窒息死させ、もつて殺害の目的を遂げ、

第二五、同月二一日午前一一時三〇分ころ、茨城県北相馬郡○○町大字○○○××の×○川○之方において、同人所有の現金約二万三、五〇〇円を窃取し、

第二六、同月二三日午前一一時三〇分ころ、千葉県柏市○○○○○×××番地の×××○久○広方において、同人所有の現金約五、一〇〇円を窃取し、

第二七、同日午後一時五〇分ころ、同市○○町××の××○川○夫方において、同人所有の現金約二万円を窃取し、

たものである。

(証拠の標目)(編省略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、被告人は、黒人混血児としての劣等感と欠損家庭による生長課程における貧困に加え、分裂病性の遺伝圏に属する精神病質者であつて、本件各犯行当時いわゆる心神耗弱の状態にあつたと主張するので判断するに、鑑定人医師岡田敬蔵作成の精神鑑定書によれば、被告人は、分裂性性格の精神病質人であつて、本件各犯行は、いずれもその精神病質的人格に基づくものであるが、当時被告人の意識は明晰であつたことならびに被告人の精神病質人格は、素因的には分裂病圏に属する家系に由来するものであるが、その人格形成過程は、生れてもらいたくない混血児として生れ、人格の基本的な構造が形成される幼少期において安定した親子関係の愛情に恵まれることなく極めて落着かない環境において生育し、情緒的に未分化のままに基本的な躾も完成されずに成長し、その後も混血児なるが故に不快な経験を続けさせられ、そのために強い劣等感が生れ、とくに女性からの注視に対し著しく過敏となり、このことが被告人を放浪および本件の各行為にかりたてる一つの動因となつていることがそれぞれ認められ、これらに被告人の本件各犯行は、判示認定によつても明らかなとおり、終始沈着冷静に敢行されておること、また被告人は、本件捜査過程を通じて犯行の動機にはじまつて犯行後の処置にいたるまで各事件の全ぼうにつき一貫して詳細かつ具体的に供述していること、それに被告人の当公判廷における供述およびその態度を総合するとき、被告人は、本件各犯行当時物事の是非善悪を弁識し、その弁識に従つて行為し得る能力の著しく減弱した状態になかつたことが明らかであるから、弁護人の右主張は採用しない。

(法令の適用)

被告人の判示第一、第三、第四、第六ないし第二〇、第二二、第二五ないし第二七の各所為はいずれも刑法二三五条に、判示第二の所為は同法二三五条、二四三条に、判示第五の所為は同法一三〇条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、判示第二一、第二三、第二四の所為中各強盗強姦の点は刑法二四一条前段に、各強盗殺人の点は同法二四〇条後段にそれぞれ該当し、右の各強盗強姦と各強盗殺人はいずれも一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、同法五四条一項前段、一〇条閲より一罪としていずれも重い強盗殺人の罪の刑をもつて処断することとする。

そこで量刑について考えるに、被告人は、判示認定のとおり、混血児としての宿命を出生のときから背負い、親の愛情を十分享受することなく成長した薄幸な子であつて、この点まことに同情に値するものがあり、このことは、分裂病圏に属する家系に由来する被告人の素因と相まつて被告人において本件大罪を含むかずかずの犯罪を犯すにいたつた遠因をなしていると見られることは前掲岡田鑑定書からもうかがわれるところである。しかしながら、被告人の祖母T・A、被告人の伯父T・Rらは、被告人のためにその両親に代つて終始親身の世話をしてきてくれたもので、同人らの被告人に対する態度に格別落度があつたとはとうてい認められない。むしろ被告人に真面目に働こうとする意思、意欲さえあれば、社会性に反しない人並の生活は十分送れた保護環境下にあつたと見られる。ひるがえつて、本件各犯行、とくに三件の強盗殺人事件の態様を見ると、結局放浪のすえ、金銭に窮するや、強盗、あるいは空巣窃盗ないし居直り強盗の目的で被害者ら宅に土足のまま上り込み、被害者らを認めるや、同人らを襲い金員を強奪したうえ強姦し、ただ犯罪の発覚をおそれ、自己の身の安全をはかるため被害者三名を無惨にも殺害したもので、その犯行たるや、まことに冷酷非情、いうべき言葉を知らない。

そして、これら犯行自体からもうかがえるように、被告人には強度の自己中心的な惰性欠如と恐るべき人命軽視の考え方の存在が看取され、かつ犯行後の被告人の言動にかんがみるとき、被告人には罪償感の乏しさが顕著であると考えられる。さらに、右犠牲となつた被害者らは、いずれも年若い女性であり、家族とともに平和な日々を送つていたのに、突如として被告人に襲われ、この上ない辱しめを受けたうえ、無残にも生命まで奪われたものであつて、愛する家族を残してこの世を去つた被害者三名の無念やるかたなき心情はとうてい筆舌に尽し難いものがあり、愛する妻や娘を辱しめられ、その生命を奪われ、円満な家庭を破壊された被害者らの遺族であるその夫や親達の深大な非嘆、痛恨はまことに察するに余りあるものというべく、本件犯行が留守を守る一家の主婦らの女性をはじめとし、社会一般に与えた衝撃、その被影響性も極めて大きいものがある。

以上のように、本件各犯行についての諸般の事情を考慮すれば、被告人は、本件犯行当時一六歳の少年であつたこと、前記のとおり、その刑事責任能力には影響は認められないとはいえ、被告人は、精神医学上精神病質人であることその他冒頭に判示したように、被告人は、混血児として出生し、人格形成過程において、親子関係の愛情に恵まれない境遇のもとに混血児としての劣等感を抱きながら、換言すれば、混血児なるが故の不快な経験を積まされながら成育し、本件犯行時におよんだこと、本件における最後の犯行後優に四年数ヵ月を経過し、現在、被告人は、年齢も満二一歳を越え、この間、長期にわたる勾留生活をつぶさに体験し、ようやく心の落着を示し、犯行に対する反省の情も見られないでもないことなど被告人に有利と思われる諸般の情状を十分しん酌しても、なお被告人の刑責は甚だ重大で厳しく追及されなければならず、被告人に対しては、極刑をもつて臨むもまたやむを得ないものがある、といわざるを得ない。

そこで判示各強盗殺人の罪の刑についてはその所定刑中いずれも死刑を、判示住居侵入の罪の刑についてはその所定刑中懲役刑を選択し、右各罪と判示各窃盗、同未遂の罪とは同法四五条前段の併合罪であるので、同法四六条一項本文一〇条三項により犯情の最も重いと認められる判示第二四の○辺○美に対する強盗殺人の罪につき被告人に対し死刑をもつて処断し、他の刑を科さないこととし、なお、被告人は、罪を犯すとき一八歳に満たなかつた者であるから、少年法五一条前段により被告人を無期懲役に処し、押収してある料理旅館○葉の名入りの白タオル一本(ただし、二つに切れている。)(昭和四二年押第一二号の二)は判示第二一の、同ナイフ一丁(刃渡り七・一センチメートル、二つ折、柄茶色)(同押号の一七)は判示第二一、第二三、第二四の各犯行の用に供した物で、いずれも犯人以外の者に属しないから、刑法一九条一項二号二項を適用してこれを没収し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野豊秀 裁判官 平山三喜夫 矢崎正彦)

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